2013.02.02 veste en donegal tweed


今日はいつもとは違い、独り言のような、思いつくままに書き綴ってみたいと思います。誤字などありましたらどうぞ御許し下さい。

日本での受注会まであと一ヶ月を切りました。

前回の日本滞在が12月26日まででしたので、あれからもう一ヶ月経ったのか・・と思うと、時間の流れが早いのか遅いのか、イマイチよくわかりません。判っているのは、毎日が非常に慌ただしいこと。朝起きて夜寝るまでの間、していることと言ったら縫っているか、パターン作りをしているか、それともお客様宅で仮縫いをしているか・・はたまた物件の工事について妻と話し合いをしているかのどれかでしょう。そしてとても良く判っているのは、日本への出発があと一ヶ月を切っていて、未だに裁断できていないスーツが山のようにあることでしょう。

フランスでタイユール(テーラー)として独立し、日本では銀座和光と日本橋三越、そして新宿伊勢丹メンズ館と受注会のお仕事をさせて頂くようになり、もうすぐ一年が経ちます。最初は毎回の訪日前の慌ただしさに、頭もてんてこ舞いになっていたのですが、人は結構頑張れるものですね。毎回、『無理だろう』と思っていたPREPARATION(準備)が全て終わらせることが出来ているのです。そんな経験?のお陰かここ最近はあまり焦らなくなってきました。出発まであと24日を切り、裁断しなくては行けない生地が約10着を越えていますが、、きっと何とかなるのだと思っています。楽しみながら頑張って行きたいと思います。

 

慌ただしい生活をするようになって、大きく進歩したこともあります。一番の変化はやはり『縫う量』でしょう。もうひたすら縫っています。当然ですがこんなに縫っているのは人生で初めてです。自分と妻の二人で仕立てのほとんどを(全てとは言いません)縫っていますので、やはり手が以前より上手くなっていきます。昨日より今日、今日より明日といった具合に。

正直以前に私が在籍していたフランチェスコスマルトでチーフカッターを勤めていた頃も、もちろん縫ってはいたのですが、ここまで縫いに没頭することはありませんでした。むしろ、頭の中はカッティングとフィッティング(仮縫い)で一杯で、いま考えるとそれだけでは良いスーツは作れないな、と思います。服作りで難しいのは、全ての工程をちょっとづつ伸ばして行き、最終的に全ての工程を理解し、出来るようになることでしょうか。書いてみるとたった二行で終わってしまうことですが、実際これを極めるのはおそらく30年から40年くらいはかかるのでしょう。

スマルトの前に在籍していたメゾンカンプスでは、毎日毎日ひたすら縫うことにより、やはりそこから見えてくる何かがありました。少し◯◯が出来ると次の工程の◯◯の難しさに突き当たり・・といった日々でしたが、それはシンプルで何とも楽しい毎日でした。ただ、縫いというのは、テーラーとして独立するには厳しく言えばですが『出来て当たり前』のことだと思います。針が持てなくて、指ぬきを使いこなせないならば、いくらカットが上手くても、良いテーラーとは言えないのかもしれません。あくまで個人的な意見ですが・・。何故かといえば、縫いというのはカッティングにつながり、カットというのはエッセイヤージュ(仮縫い)につながり、、そしてエッセイヤージュは当然ながら縫うことに繋がっているからです。どれか一つが出来ていても足りないように感じます。

 

フランチェスコスマルトに在籍している時、カッティングの精度が徐々に高くなって行く毎日に、充実感を感じることがありました。ただ、今となってみれば、それも大切だったのですが全てを理解して出来るようになること。また頭で理解しているだけではなく、手を動かし実際に出来ることがとても重要だと思います。綺麗なカット(パターン)を作れたって、お客様の身体に合わなければ意味がなく、最高に美しいハンドステッチをほどこしても、がばがばな服であれば、その職人の良さは伝わってきません。

カットは仮縫いがあるからこそ重要で、すべてがLIAISON(つながり)していなくては行けない。単純なことですが、非常に奥が深いことで、決して簡単ではありません。極めるには先にも書いた通り30年から40年位かかるのでしょう。

グレングールドのBYRDのピアノを聞きながら、なんともなしに書いてみました。明日は家族でBHV(パリで一番大きな、ちょっとシックな日曜大工のデパートです)にお出かけです。物件の壁紙や内装のヒントを得れるかもしれません。では御休みなさい。

 

 

,

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です