2012.11.17 創造する仕事


色々な人から『テーラーはデザイナーではない』ということを聞く。

何故そう思うのだろう、私は全くそう思わない。

逆に私は、こんなクリエイティブな仕事が他にあるんだろうか。と思う。既製品のデザイナー達は新しい作品を毎回のコレクションで数十体作る。それは非常に難しいことで本当の意味でのクリエイティブだと思うけれど、実際一つの作品パターンが完成したら、サイズ展開をしてその後工場で何万という数を、裁断された生地を1cmの縫い代に沿って組み立てて行く。 それらは基本的に、多くの事を考えないで、さらっと作り何万という服が毎日作られて行く。そこで一着の服作りに対して頭を悩まし、どうしたら縫えるのか・・と悩んだりすることはあまり無いだろう。

対してテーラーの仕事というのは、一人一人のお客様の体型に合わせて一体一体作りあげていく。不思議なことに人の身体は一人として同じ体型はない。同時にそれぞれの方の用途、好みに合わせてピッタリの一着を提案する。例えば弁護士の方とアーティストの方に同じスーツを提案する訳にはいかない。外資系に働く方と政治家の方とのスーツも違うし、銀行員と一般的なサラリーマンも同様に違うように提案する。私は時にデザイン画も描きながらお客様に提案して行く。

生地も同様で、テーラーが使用する生地というのは既製品のそれと違い、その時々で最新のテクニックを用いて作られた生地。時にsuper240sと言った裏地よりもずっと薄い生地で仕立てることもあり、自分の髪の毛一本が生地と芯の間に入るだけで、最終仕上げの時に表にあたりが出てしまい、バラさなくてはいけない事もある。一つの型紙を作成して何万の服を作るプレタに対して、一つの型紙でその一着を細心の注意を払いながら仕立てるテーラーリング。

縫製一つをとってみても、その方の体型にあわせてアイロンによる伸ばし、縮み…が必要で、お客様の第二の皮膚を作る(体にそったスーツ)ということは、単に型紙だけお客様の体型に合わせて作るのではなく、生地もどうように沿うように作って行く。

これがどうしてクリエイティブじゃないのか。
僕らは常に新しいことを創造している。
だから楽しくて仕方が無いのかな、とも。

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