2012.08.23 懐への入り口


この街は僕たちをどこまでも深いところまで連れて行ってくれる。
さきほどのお客様のお話をもう少しお伝えします。

奥様はとても有名な映画監督で、写真を拝見すると、カトリーヌドヌーブの亡くなられた姉妹や、数々の著名人との写真が・・。
そうした方と交友関係があるから凄い・・などと浅はかに感じているのでは決して無く、私が先ほどまで座っていたその場所に、アランドロン初め、ベルモンドやドヌーブ、ミッシェルポルナレフ、フランス中の歌手、映画監督、俳優、女優達がいただろうということ。
ローリングストーンズのコンサートも彼がプロデュースをしているとのことで、私のお客様の層もどんどん深い部分まで進んでおります。

前途の、『なにが凄いと感じたか』というのについて。
こちらのお客様、私達のお客様のご家族ということで紹介して頂いたのですが、はっきり言って私達はここでは外国人。
何処の馬の骨?かも分からないアジア人に対して、『紹介』ということとだけで信用して家に招いてくれる。
彼との話はまず、ご自身のアートに対しての考えを彼が手がけた数々のコンサート始め、映画製作、多くのアートディレクションなどを通してお話されました。
会話の途中、途中で、『君の考えるエレガンスとは??』『美意識を聞かせて欲しい』『豪華なものを身につけているからエレガントなのか?』と言ったような彼自身も言っていましたが『テスト』を経て、『君は僕と同じエスプリをもっている』と言って頂けました。話をしている間、髪の先まで集中して、すべての言葉を漏らさず聞いていました。
こちらのお客様御歳70歳を超えるのですが、私達一外国人に対して、美意識の部分で自分と近いものをもっていると感じたら、初めてあったにも関わらず信用して任せようとしてくれる。

果たして自分が日本にいて同じことをアジアからの外国人にできるか?と問いただしました。
これだけ外国人だらけのパリで、人種が混ざるということは、人に寄っては外国人蔑視をより強くします。
そんななか、スマルトでカッターをしていた。ということと美意識が共通するということ、そして日本人のエスプリを持っているということで自分達をしんようしてくれる彼の、フランスの懐の深さに、驚きました。

ここはやはり昔から芸術家の都市。
きっと若かりし頃のFUJITAもこうして肌の色関係なく、才能があると認められれば受け入れてくれるフランスの上流階級の人達と遊び歩いてたのでしょう。
人種も階級も、フランスのブルジョワ達に取ってはそれほど重要ではなく、私達という人間の内面、そして作り出すものの本質のみを見てくれるように感じました。

そしてやはりムッシュウスマルトへの信用。も言葉の端はしから感じ取れました。彼の義父はずっとスマルトで仕立てていたとのこと。ウンガロさんも確かスマルトで仕立てていたと記憶していますが、そうした美意識が非常に高い人達からもトップテイラーとして認められていたスマルト氏は、やはり本当のクリエイターだったのだと感じました。

この街の懐の深さは、日本で生活していてはおそらく体験できない内容のものだと感じ、いやはや魅力的な街だと改めて感じます。


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