2012.05.23


仕立てについて思うこと。

服の完成度は色々なものが左右します。
カット、フィッティング、仕立て・・。
その全ての工程がここ最近自分の中で一つになってきているのが良くわかります。
お客様の採寸をして、型紙を作り、生地を裁断し縫い上げていく。

服を完成させる為には多くのステップがあり、また一つ一つのステップの中で多くの学ぶことがあります。
それらが最近はよりシンプルに感じるようになり、頭で考えることも本当に少なくなりました。
手をドンドン動かし、目でそのラインを美しいか判断し、できるだけ定規をつかわず目検討でミリ単位を判断していくと、難しいといった工程などほとんど一つもないことに気がついてきます。

目を鍛えようと数年前からできるだけ、定規を使わないようにしているのですが、ここ最近は大分それが出来るようになってきました。8ミリや20ミリといった細かい数字から、15センチや35センチといった少し大きめの数字も大体ぴたりと合ってきます。そうしたことが出来るようになると、頭で考えることよりも、自分の目や手先で物事を判断するようになる気がします。
そうなると仕立ての工程はさらにシンプルになり、頭ではなくより感覚的にcomme il faut:こうあるべき と求めるようになります。もっと美しいラインを仕立てで表現する、ということも頭で考えてするものでは無いのではと思います。

メゾンカンプスにいた頃、オーナーのマルクに良く言われました。『Kenjiro,とにかく目を鍛えなさい』
それは当然毎日の仕事の中で鍛えられ、カンプスではハンドステッチを入れる際『deux mm moins un fil :はじから2mmマイナス生地の繊維一本分でやれ』とよく言います。それははじから1mmでは端過ぎて、また2mmでは端から遠すぎる。その為2mmマイナス生地の繊維一本分という言い方をするのです。
既製品で働いている人には信じられない。と思うかも知れませんが事実です。
私達は毎日手を動かし技を磨きますが、同時に審美眼も養っていきます。入社した時多くの新人はマルクの言うこうしたことに??と思うようですが、数年もすれば彼の言うことがよく分かるでしょう。
この2mmマイナス繊維一本分、アトリエにいる全員が同じように理解して同じ幅のハンドステッチを出来ます。

最初に学ぶメゾン、師匠というのは大事なことです。
レベルが高いメゾンにいれば、自分の審美眼は自然と高まり、またそれが当たり前になってくるものです。


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