2012.04.24


手に入らない道具は自分で作る。
Table de fer.

パリで独立した今、アトリエも少しずつ良くしていきます。
今回はより仕事をしやすくするため新たな裁断台と新しいアイロン台を作る為、先日BRICOREXという日曜大工店に行き板をカットしてもらいました。

上の写真は完成したアイロン台です。
ヨーロッパのテーラー達は基本的にこの上で全ての仕事をこなします。重い7kgのアイロンを使い、Travail au fer(いわゆるアイロンによる癖とり:生地を曲げたり縮めたりして立体を出す方法)をするにも、私達はスチームアイロンを使用せずあくまで重たいアイロンで焦げる直前まで熱を入れ立体的にしていきます。襟付け、袖付けといった各部分の仕事も全てこの上で行いますので、アイロン台がないということは考えられない程大切なものです。

ただ、テーラーによってはこうしたものをわざわざ作らずに、木のテーブルの上に生地をさらっと敷き仕事をする方もいますが、その場合はアイロンによって発生した蒸気を逃すことが出来ず、数年で木のテーブルがボコボコに歪み使い物にならなくなります。

ヨーロッパのテーラー達は日本の職人達に比べ随分と重量のあるアイロンを使用します。
日本のもので一番重たいもの(現行販売品)で約3、2kgに対して、私達は7kgのものを使用してます。
単純に見ても重量は倍以上異なります。

何故それほどまでに重いアイロンを使うかといいますと、重量があるアイロンの方がよりアイロンが効くためです。
つまり、生地の上に一定温度の熱を加えますと、当然数分後には焦げてきます。
それではその数分間の間により効果的にアイロンを効かせるためにはどうしたら良いか。
それは、まず重量のあるアイロンを使うこと。そして加えた水分を完全に飛ばすことの二つが最重要になってきます。

写真はアイロン台の裏面に蒸気を逃すために無数の穴をドリルであけたもの。
この無数の穴達はそうした水蒸気をしっかり逃すために必要なものなのです。

その後固めのフェルトを固定し、最後にジャケットを仕立てた残布でくるみ、細部をしっかりと引きながら固定して完成です。

日本では手芸材料店に行きますと、すでに作られたアイロン台が売られています。それらは無数の穴をあける代わりに、中におがくずを入れて作られ同様に蒸気が抜けるように作られています。
パリではそうした日本で手に入らない材料も多々あり、そうしたものはちょっとの時間と工夫で自分達で作ることが出来、手作りのものはそれだけ愛着も湧くものです。


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