2012.05.08

May 8th, 2012
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Table de coupe et la facon de travail entre les deux pays:裁断台と日本とフランスの仕事の違い。

フランスではTable de coupe(生地を裁断する裁断台)は通常スーツの着分以上の長さで作られています。つまり最低3M30CMはあるテーブルとなります。写真はスキャバルの生地を裁断台の上でパターンをのせてマークしたところ。

日本では一般的には2M程度の裁断台で、部分的にチャコでマークし、生地を切ってはずらし切ってはずらし・・という方法を良く目にします。当然ですが切ってはずらし・・の方法ですと引張る度に生地はズレますからチェック柄の時などはずらした後に再度柄を合わせ直す必要があります。私も多くのテーラーさんのアトリエを拝見しましたが、ヨーロッパで使われているような長い裁断台を使用しているのを見たのは、ただの一度もありません。

対してフランスやイギリス、イタリアは基本的に合理主義ですので、一度生地を広げて柄やズレを直したのなら、そのまま一気に裁断することが昔から好まれているようです。こうすることで速く、正確に裁断できるという考えです。スーツの着分は最低2m70cmといわれ、ヨーロッパでは3mがミニマムな長さです。大きい方ですと4m以上必要な方もいらっしゃいます。また、おそらく日本よりもHabit(エンピ服),Jacquette(モーニングコート),Cape(ケープ)といった注文が多いことが理由の一つかも知れません。特にケープとなりますと、生地を広げて裁断しますので(150cm×150cmのように円形型の為)かなり大きな裁断台が必要となります。

また日本のテーラーさんに御邪魔しますとヨーロッパの仕事の仕方と大きく違うことに気がつきます。違いの一つ目は私達ヨーロッパ式では終日立って仕事をしますが、日本の職人さん達の多くは座って仕事をします。日本は昔から和装の文化から雪駄や下駄(すぐに脱ぐことが出来る)そして当然ですが家に上がる際は靴を脱いで上がりますね。

対してヨーロッパが昔から靴の文化なのは周知の通り。つまり朝自宅を出た時から(家庭によってはベットから降りた時から就寝する時まで)夜帰宅するまで靴のままです。その為歩く、立つ。という基本行動の考え方が日常生活の中でも、また仕事をする上でも日本とは異なるように感じます。パリの街中を歩いていると、70歳を過ぎたマダムがシャネルスーツにハイヒールを履いて石畳を闊歩している光景に多々出会います。日本の70歳代の女性達はむしろヒールのない、柔らかそうな靴もしくはスニーカー等を履いているのを良く見かけます。

それでは、立って仕事をするヨーロッパ式と、座って仕事をする日本式ではどんな違いがあるのか・・?
縫い仕事をする際座りながら作業をする日本と、常に立って作業をするヨーロッパでは、動きのダイナミックさが異なると思います。ダイナミック?同じように縫ったものからそんなことまで違いが出るの??と思われるかもしれません。私もパリでテーラーとして働き始めた数年間はそうしたことを意識したことはほとんどありませんでした。これは以前に私が書いたコラムの中でも触れていますが(http://kssm-cecilia.com/blog/2011/06/アトリエから見たパリ第5回/)常に他の職人よりも早く縫えと幼少の頃から鍛えられた彼らは、それぞれが独自の方法で一分一秒をどうしたら削れるかと常に考えています。ポケット作りをするとき、襟を付けるとき、芯を据えるとき・・。そうしたことからも、靴を履いて立って仕事をしている方が、俄然ダイナミックに仕事ができるのだと思います。

不思議と、作っている最中のそうした動きや、何を考えて縫っていたか、そこに自分達が求める美意識・・といった想いは出来上がった作品にしっかりと反映されるものです。国が違えば“何を良しとする”のも異なります。一見縫い目が何処にあるのか見えないほど細かく縫うのを良しとする日本のテーラーさんと、“服は柔らかく作るもの。小さく、こまかく縫ってしまうことで縫い目上にゆとりがなくなり、服に動きがなくなる”と考えるヨーロッパのテーラーでは、一着のスーツが完成した際には見た目も、そして着心地も、その差がかなり大きいものになるでしょう。

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